vol.44『虹色のチョーク』から見える20代の若者に伝えたいフレーズ
障害者雇用と聞いて何を考えるだろう。少なからず自分も会社経営をする中でこのことに対処しなければいけない。
障害者雇用促進法という法律があり、企業規模にもよるが、一定の率で、従業員として障害者の雇用を義務化する法律だ。
一般的に2%という率が課せられており、これに満たない場合はペナルティを支払う必要がある。それだけ、国も障害者の雇用を強く推奨てしていると言っていい。
すごくセンシティブな問題ではある。ただ、子どもが生まれてから命に対する考え方は深まったように思う。何が正常で、何が障害か。すごく難しいが、事実、障害を持つことで本人のみならず、その親が悩み苦しむのは想像できる。
本著の取材対象である日本理化学工業は、障害者雇用を強く推進している日本を代表する会社である。仕事をする、ということがここまで人の成長のコアとなっているか、心を洗われる内容だ。
経営者が語る一文に詰まっている。
人は仕事をすることで、人の役に立ちます。褒められて、必要とされるからこそ、生きている喜びを感じることができる。家や施設で保護されているだけでは、こうした喜びを感じることはできません。職業を持って必要とされる喜びを知った彼らは、さらに懸命に働いてくれます。そして、そんな彼らを毎日見つめてきた私こそ、彼らから、働く幸せ、人の役に立つ幸せを教えられたのです
偏見抜きに一般的に障害者に対しての感情には「かわいそう」「支えてあげよう」と言ったようなものがあるように思う。それは語り手が障害者でないからであり、何を持って幸せかは非常に難しい。この一文がその偏見を覆してくれる
健常者が障がい者に寄り添って生きる『共生社会』ではなく、『皆働社会』なのです。そのことに気付いた私は、福祉施設改革による『皆働社会』の実現を経営理念の一つにしました
本著を読んで思うことは、そのくらい仕事に携わるということが、人間が生きていく上で欠かせない要素であるということである。だからこそ、リーダーはそれぞれの役割を見極め、育て、やり甲斐を持って働いてもらえるよう腕をふるう必要があると思う。
一般的に人に物事を教える時の精神、心構えを端的に示した一文が秀逸だ。
「父や当時の社員たちは、障がい者を前に『どうしてできないんだ』と考えるのではなく、常に『どうすればできるんだ』と、考えました」
できないことを責めても何も生まれない。そうすれば出来るのかを考え実行することが、双方が前に進む唯一の方法である。WHY脳ではなくHOW脳が成長を支える。
ハイライトは人間の幸せに言及した教えだ。これは一生心に留めておくべきことだと思った。リーダーも経営者もこの心を持って日々仕事をしたいものだ。
人間の究極の幸せは、
- 人に愛されること
- 人にほめられること
- 人の役に立つこと
- 人から必要とされること
これほど胸に突き刺さる名言もあまりない。 確かにどれもが、幸せを構成するのに欠かせない要素だと痛感する。それを解説した文章にも唸る。抜粋。
人に愛されることは、施設にいても家にいても、感じることができるでしょう。けれど、人に褒められ、役に立ち、必要とされることは、働くことで得られるのです
最後に、経営者としてのミッションに繋がる考え方を抜粋したい。仕事とは何をするか、ではなくなぜやるか、である。そのために、リーダーたるものは心の持ちようがもっとも重要だと自分は考える。
実直であること、正しいことをやること、新しいことに挑戦し続けること、そして、皆が活躍できるステージを磨き続けることが、リーダーには必要だと思う。日本理化学工業の経営者はこう語る。
方針を決め、組織を整え、目的を達成するよう物事を持続的に行うこと。そして、どんな瞬間も、社員を細やかな心で思うこと。日本理化学工業を率いる社長にとって、それはまさに経営の両輪
働けることの尊さ、仲間の大切さ、など、本来の仕事をできる喜びを再定義してくれる名著である。多様性が叫ばれる昨今、是非とも若きリーダーには一読してほしい
まとめ
- 『どうしてできないのか』と考えるのではなく、『どうすればできるのか』と考えることが大切
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人間の究極の幸せは、「人に愛されること」「人にほめられること」「人の役に立つこと」「人から必要とされること
- 仕事で大切なことは、何をするか、ではなくなぜやるか、である