vol.43『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』から見える20代の若者に伝えたいフレーズ
親愛なるロッシェル カップ氏の新著。と言っても7月の発売だからかなり時間が経過した。それにしても本氏は本当によく日本のビジネスシーンを理解している。どれだけ彼女の発言に日々、勇気をもらっているか。感謝、感謝。
本著での自分なりのハイライトは「Fail Fast」である。抜粋
アメリカ企業は"Fail Fast"(はやく学ぶ) の実践、そして完璧ではなくてもミニマム・バイアブル・プロダクト(最も基本的なバージョンで機能を満たす商品) をいちはやく顧客に提供し、そこからフィードバックを得ることに焦点をあてている
失敗は必ず起こるが、それが大きな学びの機会となるので、その機会を逃してはいけない。その意味では、失敗はフィードバックの一種に過ぎない
Fail Fast"の本当の意味、「早く学ぶ。なぜ間違ったのかを早く理解し、次に取り組むときには、その失敗を生かして成功を目指す」
この発想を会社経営者、企業の上司、働き手、学校関連、はたまた、子を持つ親も持つべきではないか?
「Fail」を日本語に訳すと「失敗」となる訳だが、どうにもこの言葉の持つべき負のパワーがよくない。上記にもあるように早く学ぶために必要な要素であって、決してネガティブワードではない。
よく私も若手ビジネスマンに話すのは失敗に絡む話す。
- 成功←反対語→失敗
とほとんどの人が考えているがそれは違う。
- 成功←反対語→何もしないこと(Do Nothing)
である。だからこそ、働くインフラは調整できる部隊である必要があるし、何もしないことを悪癖として鼓舞するマネジメントが必要だ。理由は明白である。人は失敗からしか学べない、それだけである。
企業におけるイノベーションの必要性を端的に示した一文に震える、大いに同意する。抜粋。
20世紀の企業は、マーケットシェアを大きくし、売り上げや利益を向上させていくことが目標であり、それらをどれだけ達成できたかを成長の指標としてきた。
21世紀の企業は、絶えずイノベーションを起こし、進化して生き残ることを目指す。製品やサービスのイノベーションだけでなく、開発、生産、マーケティング、セールス、ロジスティック、ブランド、チャネル、組織のストラクチャー、マネジメント、プロセスにおいてもどんなイノベーションを起こしていけるかに焦点を当てる
やること、やるべきことが異なってくると、やる側のマインドセットも変わるべきである。しかし、著者が語るように、日本はその肝心なマインドセットが変わらない。企業は継続性も必要だが、やはりエンジンとなるのは成長であるはずだ。
21世紀の企業にとっては、実際に製品やサービスを使うユーザーが価値を感じることが第一である。いくら素晴らしいテクノロジーを活かした機能が盛り沢山でも、顧客が自分で体験したときに感じる使い心地、便利さ、満足感、感動、驚き、ストレスのなさといった価値がなければ何の意味もない。
サービスを受ける側のニーズ、マインドを徹底的に考える癖。これがビジネスで欠かせない。上司が「いらない」と言っても、お客が「必要」といえばビジネスは成立する。上司の顔を見ていても日本経済が成長できたのは、固定的なビジネスモデルがあったからこそである。今はそういう時代ではない。
20世紀の企業は、物がなくて人々が困っている社会においてニーズが顕在化していたので、何を提供すればビジネスが成功するかが明確であり、それを安定して供給することが成功への近道であった。そのため、安定して製造供給できる工場管理システムや正社員をベースにした雇用関係、終身雇用が確立された。
21世紀の企業は、社会に物が行き渡り、むしろ物余りになり、消費者のニーズも多様化し、何が正解かわからない状況にある。そこで、様々な仮説を検証し、ユーザー・顧客・市場からのフィードバックに基づいて学習し、すばやく変化できる軽いフットワークと柔軟性を持って、過去の成功にこだわらず、事業や仕事の進め方、組織をダイナミックに変えていくのである
今の働き方、今の仕事内容、今の仲間、、、あらゆる事象に疑問を投げかけながら変化を享受する日常を取り入れることが、特にこれからの時代を担う若手ビジネスマンに求められる考え方だ。そしてそれを享受する年配者の変化も同時に求められる時代になってきている。
詳しくは書かないが、KPIマネジメントと比較されるOKRについても触れている。確かにKPIの発想は古いかもしれない。マネジメントの世界も変化していることを本著は指し示している。
最後に日本のオフィスのこれからのあり方を考えたい。クラウド、在宅ワークなど広がるにつれて、環境も大きく変わってきている。育休を取る男性社員が増え、在宅で働く主婦の存在も脚光を浴びる。でもこの辺りを取り入れるのは、やはり経営トップの決断であると最近つくづく思う。当然だが、やはり企業文化を作る、その走りは経営者であろう。
会社を成長させるには社員の能力を引き出すことが求められる。従順さを重要視する時代ではない。破天荒でアイデアマンで失敗を厭わない挑戦者を尊ぶ会社を目指すべきであろう。
ますますエンゲージメントという言葉が重要になってきている。条件ではなく、存在意義、ワクワク感、経営者そのものではなく、経営者のビジョンが働き手のモチベーションになるのが正しいチームではないか?抜粋
日本企業には規範や慣習、しきたりなど、明示化も文書化もされていない暗黙のルールやポリシーがやたらと多い。そういった類いのルールやポリシーは変えようがない。変えるためには、その暗黙のルールやポリシーをまずは明確に文章化してみることである。そして、皆でその文章を見て、そのルールやポリシーが現場に合っているか、必要があるかを検討し、必要がなければ廃止したり、現場に合うように書き換える。このようなプロセスを踏まえないと、なかなかチーム全員の意識は変わらない
「生き残るためには、経済合理性を考え、働く人たちのことも大切にしなければいけない」ということを意識している会社がシリコンバレーには多い。会社が生き残り、継続するためには、会社もそこで働く社員も健康でなければならない。そういった意識が企業の根幹に根ざしている
シリコンバレー企業が人間性へのリスペクトを重視するのは、イノベーションを追求しているからである。社員に創造性を発揮して、どんどん新しい技術やビジネスモデルを開発して欲しいのであれば、彼らがモチベーションを高く保って集中できる環境を整備しておかなければならない
そのためにもまずは社内のルールを見える化して、良いルールを作っていこうという姿勢をTOPが見せることだ。そしてそこで働く若いビジネスパーソンはあるべき姿を自らの言葉で語り、それこそ、失敗を恐れずに変革者であってほしいと思う。「Fail Fast」をぜひ実践してほしい。
まとめ
- "Fail Fast"(はやく学ぶ)がビジネスマンに必要な要素である
- 「成功」の反対語は「何もしないこと」である
- 企業・働き手にとって「継続性」は必要要素だが、本当に大切なことは「成長」である
- 作者: ロッシェル・カップ,到津守男,スティーブ・マギー
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