vol.42『ディズニーはまず「おそうじ』を考えた』から見える20代の若者に伝えたいフレーズ
ディズニーとの関係性が希薄に見える赤ちゃん。いやいやこれがディズニーの「おそうじ」を語る上で欠かせない要素である。ディズニーの美観の基準は非常に具体的でわかりやすい。「そこで赤ちゃんがハイハイできるか」である。そうじの仕事を生業にする自分からすると、ディズニーは目指すべき組織形態の一つである。
著者である我孫子薫氏は1982年にオリエンタルランドに入社。東京ディズニーランドのクリンリネスを作り上げた偉人だ。美観がいかに大切か、20代の若者に限らず、一読の価値があると思う。
ディズニーランドには様々なルールがある。汚れてから清掃するのではなく、汚れる前に清掃する。通路は15分ごと、トイレは45分ごとに巡回・対応することが決まっている。確かに園内で汚れを目にすることは皆無かもしれない。
綺麗であることは当然のように捉えられがちだが、日本に来る外国人が駅のトイレの清潔さに感動するように、綺麗であることは、万国共通の素晴らしきことであると思う。しかし、残念ながら、ビジネスシーンに置いてその感覚が乏しいと言わざるを得ない。そういった考え方において、非常に自分と酷似している。抜粋。
きれいであることは決して「おまけ」ではなく、正当に評価されるべきサービスです。直接顧客のリピート率を上げ、あるいは業務の効率や業績をアップさせることのできる切り札になり得ます
きれいなところ、美しい場所に、人は集まってきます。人が集まってくるという事は、そこに価値が生まれるということです。掃除が行き届き、木や花が植えてある会社は、それだけでイメージアップに貢献します。これこそ商売の基本でしょう
綺麗が印象を妨げることはない。だからこそ、企業においても、整理整頓が大切だし、二の次になることはあってはならない。本来、そのくらいパワーがあるものであろう。繰り返し、清潔さは重要な商品である、と述べられている。
ディズニーのそうじに対する行動規範にSCSEというものがある。
- Safety(安全)
- Courtesy(礼儀正しさ)
- Show(ショー)
- Efficiency(効率)
これは重要度によって上から下に見る。効率より、安全を重要視せよ、ということだ。
分かりやすい事例として床とテーブルがあったとき、ディズニーでは床から掃除するというものがある。違和感はあるだろうか?
清掃業に携わらずとも、普通はテーブルから掃除をするものだ。埃などは床に落ちるものであるから、効率性を考えれば当然、テーブルを拭いた後に、床を掃除する。しかし、SESCの考え方であれば、安全が一番大切であるので、ゲストがスリップしないよう、つまり安全性を保つために、まずは床を掃除するというわけだ。非常に深い話であり、分かりやすい事例だと思う。
やはり、組織にはこういった規範、ビジョンなどの具体的なアウトプットが大切だと痛感させられる。抜粋。
フィロソフィー(哲学)があり、教育があって、インセンティブ(報賞)とコグニション(評価)に手を尽くしているからこそ、グッドショーを続けることができるのです
トイレに対する「カイゼン」の話も興味深い。東京ディズニーランドは女性7割、成人7割、首都圏在住者7割、という法則が存在するらしい。しかし、当初は男女比を1:1で見ていたため、女子トイレが当初は大混雑したという。利用時間も女性は男性の3倍。そういったデータを活用しながら、今ではほとんど混雑のない環境になっているという。仮説が誤っても日々改善し最適化する。当然だがこれが難しい。
最後にディズニーの教育論について触れたい。明確な命令系統がディズニーにも存在する。多くのアルバイトが採用され、また多くがやめていく環境にあるにも関わらず、なぜ日々、サービス品質が向上するのか? 明確なビジョン・哲学があることと、それを浸透させる仕組みがあること、が要因だと考える。上下関係について触れている一節が深い。抜粋。
人の上に立つ際に抱える悩みの原因は、往々にして、立場が明確に違ってしまっていることで下の人間が自分に対して本心をさらけ出さなくなっていくことです。「上から目線」の上司に対しては、部下は本能的に自己防衛意識が働き、絶対に本音など吐かなくなります。そして陰口が横行するのです。本当の気持ちをみんなが快く話せる環境を作ることは、管理職の大切な職分です
いい仕事をするのに必要なのは上下関係ではなく人間関係であろう。もし20代の若いリーダーがメンバーを得た時はぜひ心得て欲しいことである。
まとめ
- 企業における美観は代替しようの無い重要な要素である
- 具体的で、明確なビジョン・哲学があることが組織には不可欠である
- いい仕事をするのに必要なのは、上下関係ではなく人間関係である
「お客様の幸せ」のためにディズニーはまず「おそうじ」を考えた
- 作者: 安孫子薫
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