vol.39「シャープ崩壊」から見える20代の若者に伝えたいフレーズ
誰もが学生時代親しんだシャープペンシル。恥ずかしながら本著を読んで生みの親がこのSHARPであったと初めて知った。AQUOSなどのテレビに代表される家電メーカーの印象が強いだけに、本当に意外だった。
タイトルの通り、老舗企業シャープが台湾メーカーの鴻海(ホンハイ)に買収される直前までを描いたノンフィクション作品だ。ビジネス書ではなく、SHARP内で経営層含め何をしていたのかがリアルに描かれている。
企業とはどうあるべきか、どう変化すべきか、どうブランドを気づくべきか、また守るべきか、海外企業とどう付き合うべきか、そもそも経営とは、理念とは何なのか、そう言った漠然とした解のないテーマを考えさえられる書籍だと思う。
文中にシャープの文化の良さ、悪さを象徴するような言葉が並ぶ。抜粋。
シャープペンシルなど数多くの製品を開発した創業者の早川には有名な教えがあり、その一つが「模倣される商品を作れ」だった
下請け企業に対し執拗に部品の値下げを迫り、横柄な態度で接するシャープの悪評は、地元の関西地域ではよく知られていた
企業とはどうしてこう規模が大きくなると創業精神を失うのであろうか?人にとって企業にとって全ての成長を阻害するマインドは「慢心」だと疑わない。現状に満足することは永遠に訪れず、企業の理念(WHY)のために進むしかないはずだ。
アクオスの成功で経営陣には慢心がはびこった。挑戦者としての謙虚さが消えてしまった
しかし、人間とは慣れる生き物であり、変化を基本的に嫌う。過去の模倣が快感であり、未経験はそれだけで毛嫌いされる。しかし、そういうマインドで時が過ぎると必ずマーケットから追い出されるのが世の常だ。
SHARPだけでなくやはり日本の経営者の在り方に問題があるように思う。全てとは言わないが、一部門で大きな成果をあげ、その功労として重役に就くことが日本では多いように思う。しかし、そうなると歳をとり感度が鈍り、年齢的にもチャンレジすることが困難になる。ステークホルダーに対して良く見せるために、先行投資を減らし、チャレンジしない体質に落ちてしまう。如実に表す内容を抜粋。
「沈みゆくタイタニック号の中で椅子取りゲームをやっている」と言われた三洋電機の悲喜劇が、シャープでも繰り返されることになる
時に「経営のダイナミズム」の源泉とされる権力闘争だが、業績の落ち込みがひどく、自主再建の道が限りなく難しくなった会社には人事抗争の勝者などいるはずもない
当然、人にもよるであろうが、営業トップが経営者に向いているなんてどこにも確証がない。そもそも仕事の内容が違うからだ。経営者になるには、経営者を経験するしかない、と思っているが、それでも経営者の考え方、スタンスなどは近くに行く社長なり世に溢れている書籍を通じて学ぶことはできる。
個人がクローズアップされる時代が迫っている昨今、若い20代のリーダーこそ経営マインドを若いうちから学ぶことをお勧めする。必ずそのアクティビティは身を守ると約束できるからだ。
この一文は本著の最後に書かれた内容である。
関係者の誰もがシャープという会社の復活を信じず、火中の栗を拾おうともしなかったなら、時間だけがいたずらに浪費され、これまで以上に悲劇的な結末になるのかもしれない
皮肉とも取れ、実際この後にSHARPは鴻海(ホンハイ)に買収されることになる。また日本に老舗メーカーが消える。事実だとしてもやはり悲しさは残る。
まとめ
- 人にとって企業にとって全ての成長を阻害するマインドは「慢心」である
- 経営者の考え方、スタンスなどを若いうちから学ぶべきである
- 現状に満足することなく、己の理念・在り方のために前に進んで欲しい