vol.28「ネットフリックスの時代」から見える20代の若者に伝えたいフレーズ
2015.9.1に日本でサービスをスタートした際は「黒船」と形容されたNETFLIXの日本社会への影響について書かれている。テレビを取り巻く環境、その周りにある広告の行く末、メディアというプレゼンスの将来についてを著書が鋭い洞察で語る。
著者の西田宗千佳氏は自分が最も尊敬するメディアジャーナリストだ。TVなどでの露出は少ないが、彼の家電、メディア、ITなどに対する語り口は他の追随を許さないほど独特。彼にはメディアの未来が誰よりも見えていると感じる。抜粋。
現在のテレビの仕様は、もはやネットの動向を無視して決めることができない状況だ
NETFLIXはグローバルでの有料会員数が6,000万人。アメリカのゴールデンタイムにおけるネット回線の30%を占めているというから驚きだ。もはやメジャーなTV局と言ってもいい。
成功要因は多々あるが、その代表格が家庭内にあるリモコンにNETFLIXの赤いボタンを配置したことだ。
最近は日本の多くのリモコンにもデフォルトで配置されている。
もう一つの要因はハウスオブカードに代表されるオリジナル作品の展開である。Huluであろうが、TUTAYAであろうが、amazonであろうが、同じ映画は同じ内容だし同じクライマックスになる。当然。だからこそ、差別化要因としてあげられるのは疑いようもなく作品ラインナップにある。
日本でもTV離れが進み、メディアとのタッチポイントは多様化している。お茶の間といえばテレビが代名詞だったが、今は若者とのメディアのファーストタッチポイントはスマホに変わった。そんなメディアによる生活様式の変化から生まれる未来予想図の洞察はさすがと言わざるを得ない。抜粋。
ひとつの本質として、「なにかがあればテレビの前に集合する」ような習慣が失われているのはまちがいない。古典的な「テレビの前のお茶の間」が失われて久しい
インターネットは自由と選択をもたらした。朝の11時でも夕方4時からでも、自由に見ることができる。携帯電話により、いつでもどこでも話せるようになった。そこで多くの自由が生まれたが、それと同じだ
暇をつぶす機器のファースト・チョイスがスマートフォンになった現在、テレビの番組を覚えてくれるのは相当に熱心な視聴者だけになってしまった。チャンネルのブランドも、テレビの放送時間も、もはや強い誘引力にはならない
知人のTV局の方に聞いたところ、NETFLIXは日本でもオリジナル作品を幅広く展開しようと、大手日本テレビ局の制作スタッフを猛烈に引き抜いているという。それだけTVを含めた映像業界には大きな余波が来ていると見ていい。
4/3に大手新聞で大々的に取り上げられた「民放15社、ネット配信で提携 同時配信実現へ」というニュースからも、今後、凄まじい変化がもたらされることになる。
http://www.asahi.com/articles/ASK435HL1K43ULFA023.html
地方テレビ局のオリジナル番組率は10%だという。もし、ネット同時放送がスタートしたら、大手テレビ局から番組を買うということすら起こり得なくなり、テレビ放映網そのものもネット通信の前では存在感を見失って来ている。抜粋。
テクノロジーの影響による視聴行動の変化は、業界全体でのビジネスモデルを揺さぶる。そしてそのことは、新しい世の中に合ったコンテンツを生み出す元となり、我々の生活全体を変えていくことになる。映画からテレビへ、CDからネット配信へ変わることで生まれた変化よりも大きな波が、いま我々の生活を変えようとしているのである
と、ここまでTVを取り巻くメディアの現在という本ブログの趣旨とはかけ離れているような論調をした。SpotifyやApple Musicなどの音楽業界における内容も記載があるので興味のある方は深読みをオススメする。
若い世代に感じて欲しいのはビジネスモデルの潮目(未来)である。世の中の人々の商習慣の変化・トレンドを的確にスピーディに捉え、それにプラスしてテクノロジーの進化が、世の中に、ビジネスに、生活に、仕事にどのような影響を与えるかを常々考えていかねばならない時代だ。
NETFLIXだけでなく、YouTubeなどのメディアも今後さらに台頭することは確実であり、これまでのような存在感をTV業界は示せないかもしれない。若い人たちには、前例主義とはあくまで前例であり、未来を保証するものではないと強く認識して欲しい。
NETFLIXの人事評価には「失敗の回数の多さ」があるという。失敗ゼロでは評価減。それだけ、挑戦しなければ何事も勝てない時代ということであろう。抜粋。
テクノロジーの進化は、場所と時間の制約を小さくした。人びとがそれを基本にした新しい生活を求めるようになるなら、それを満たすビジネスのニーズが生まれるのも当然ではある
入り口評価が日本の常だ。大学は入ったら勝ちかもしれない。でもビジネスはどうとは限らない。東芝が凋落する時代。会社の看板に依存せず、常に個の力を伸ばし続けることがより重要な時代になって来ている。
まとめ
- お茶の間は少なくなり。若者とメディアのファーストタッチポイントはTVからスマホに変わった
- 前例主義とはあくまで前例であり、未来を保証するものではない
- いかなる業界でも個人の力を伸ばすということを常に念頭に置くべきである
ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える (講談社現代新書)
- 作者: 西田宗千佳
- 出版社/メーカー: 講談社
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