vol.17「ビジネスモデル2025」から見える20代の若者に伝えたいフレーズ
IoT、インダストリー4.0、AIなど、様々な未来用語がはびこる昨今、若い20代の方こそ、未来の技術分野に興味を持たねばならないと痛感してほしい。劇的にビジネスシーンにおける変化のスピードは増してきており、10年どころ1年前まで常識だったことが、簡単に覆る変化に富んだ時代が到来している。
本著はそんな10年後の近未来を描いた名著であり、これからの若い方の働き方にも影響する内容。将来のキャリアパスを描く上でも、これから世の中で何が起ころうとしているのかを知ることは必要不可欠と言えるだろう。
冒頭にある言葉は自分がITの到来を表現するときと同じものだった。抜粋。
今は、あらゆる関係性が再構築される時期にある
Capter1の最初に現代の経済社会を端的に表す数値データがある。
世界の富裕層上位80人の総資産総額は、貧困層35億人の資産総額に匹敵し、上位1%の富裕層が持つ資産総額は、残る99%の人口の資産を合わせた額と同程度
トマ・ピケティが提唱する現代社会の格差を象徴する内容だ。でも貨幣経済を前提としたこういった考え方は本当なのかと疑問に思う。ITの登場により貨幣以上に価値を持つものが現れ、富裕層でなくとも価値提供をできる時代が来ているのも事実だ。「大手ではないからできない」なんて根拠のない白旗を上げる連中がいるが、そんなことは決してない。多くのインフラが廉価に向かう現代において、貧困層でもこれまで以上に勝ち上がるチャンスは無数にあるはずだ。抜粋。
誤解を恐れずに言うならば、現代の単純なプロフィットパラダイム、つまり自社の貨幣的利益のみの最大化をただひたすらに追う資本主義はゆっくりとした終焉のスパイラルに入っており、新たな経済パラダイムが出現しようとしている
Uberをはじめとしたシェアリングエコノミーに関する進展についても言及している。そしてそういったスタートアップが突出してくるための組織論があまりに深い。強く同感する。
これから誕生する組織はより小さくコンパクトになるし、そのカタチは大規模なピラミッド型ではなく、フラットなネットワーク型、そして時間軸はより短くなる。これまでの経済社会における組織像が劇的に変化するのである。その底流に流れる哲学も、「組織のための人」ではなく「人のための組織」というように明確に進化していく。
若者の物欲が薄れ揶揄されることが多々あるが、人類はモノで満たされた歴史を経て、コトでしか満足しえない時代にさしかかっているのだと思う。あらゆるコストがゼロに近づく経済において、本著の言葉を借りれば、価値消費は、モノやサービスにアクセスするという概念に収斂されていっている。これが現代の流れであり、今後向かうべき方向性だと思う。
本著の中盤からは米国を中心としたスタートアップの今の動きが列挙されている。掃除ロボット、警備ロボットなどが、我々が携帯電話を契約するように、今後、家庭に入ってくる可能性は非常に高い。WEBサイトの一部もすでに自動作成が進んできているという。
そこで常に論じられるのが、人間の仕事がどうなるのか、奪われるのかという件だ。生産性の向上から価値創造に世の中のビジネスにおける潮目がシフトしていくのだから、当然、人間がやる仕事内容も劇的に変わらざるをえない。駅の改札から切符を切っていた駅員が消え、空港の荷物チェックのスタッフも徐々に減ってきている。仕組み化できる業務レベルのものは今後ますます人がやらない仕事になっていく。抗うことはできない。
将来のビジネスシーンに対して興味を持ち、常にテクノロジーの変化にアンテナを張らずして、キャリアパスを描くことは不可能だ。ドローンが自分の生活、仕事にどう影響するのか考えた若者が日本にどのくらいいるのだろう?警備業、配送業という人間が本来すべて実施してきた仕事が根こそぎ奪われてきている。決して無視できない。
最終章「次世代ビジネスの哲学」はこれまでとは打って変わって、テクノロジーの進化とは何なのか?、ロボット社会は待望すべきなのか?といった、タイトル通り、哲学的な内容が並んでおり、考えさせられる。抜粋。
今、私たち一人一人が「新しい社会」について考えなければならない時にきている。江戸から明治への転換、そして、戦後のあの焼け野原から復興した時のように、一人一人が自分ごととして、社会のことを真剣に考えなければならない時に突入しているのだ私たち一人一人は微力ではあるが、無力ではない。
テクノロジーの進化とは、単に人間の生活が便利になるためだけのものであっては決してならないと思う。弱者に寛容であり、モノだけでなく、コトに対して幸せを感じる、人間本来の欲求を満たせる社会をビジネスを通して貢献できればと願っている。
まとめ
- テクノロジーの変化がもたらす将来像を常に創造せよ!
- 「組織のための人」ではなく「人のための組織」が今ある組織像である
- 今到来している「新しい社会」のあり方を考えよ!